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河野建築のよもやま話~7~

河野建築の更新担当の中西です。

 

~“変遷”~

 

1|窓は“景色の穴”から“性能デバイス”へ

かつて窓は採光・通風のための開口部。
いまは断熱・遮熱・遮音・防犯・換気・意匠を司る“住宅のチップセット”。
キーワードは 省エネ・快適・健康・静音・防災・デザイン です。


2|〜1970年代:単板ガラスとアルミ黎明期(美観中心)

  • 主流:単板ガラス+アルミサッシ。

  • 施工:新築時に組み込み、改修は“ガラス交換”が中心。

  • 課題:結露・夏の熱負荷・冬の冷輻射・騒音。

窓は“見た目”を整える要素で、性能は二の次の時代。


3|1980〜1990年代:断熱の目覚めと複層ガラスの普及(性能の入口)

  • 素材:複層ガラス(空気層)・樹脂パッキン・気密材の進化。

  • サッシ:アルミの軽さとメンテ性を活かしつつ、気密・水密が改善。

  • 需要:結露対策や道路騒音対策の後付け内窓が登場。

  • 施工:はめ替え・カバー工法の原型が現場で磨かれる。

「寒い・うるさい」を窓から変える発想が広がる。


4|2000年代:Low-E・樹脂サッシ・カバー工法の洗練(体感価値の時代)

  • ガラス:Low-E膜+アルゴン封入で熱貫流率が大幅低減

  • フレーム:**樹脂サッシ/ハイブリッド(樹脂×アルミ)**で断熱橋を抑制。

  • 工法:既存枠を活かすカバー工法が標準化、住みながら短工期で施工可能に。

  • 付加価値:遮熱フィルム、合わせ(防犯)ガラス、日射制御という発想が定着。

“冬あたたかい・夏すずしい”を数値と体感で説明する営業へ。


5|2010年代:ZEH・健康快適・遮音の本格化(生活の質へ)

  • 断熱グレード:地域区分に応じた性能提案が当たり前に。

  • 内窓リノベ二重窓で断熱+遮音+結露抑制を同時に実現。

  • デザイン:大開口・細框、格子意匠、色・質感の選択肢が増える。

  • 換気・気流:窓まわりの自然換気設計や“すき間風ゼロ”が快適性の基準に。

省エネだけでなく、睡眠・在宅ワーク・アレルギー対策など“暮らしの質”を改善。


6|2020年代:脱炭素・静音・レジリエンス・スマート(総合ソリューション化)

  • 高性能化真空ガラス・薄型トリプル・樹脂フル枠で新築同等の性能を後付けで実現。

  • 静音:合わせ+中空層の複合遮音、線路・幹線道路・在宅録音需要に対応。

  • 防災飛散防止・防犯・耐風圧、停電時でも暮らせる断熱×日射制御提案。

  • スマート:電動ブラインド・調光ガラス・日射センサー連動。アプリ連携で日射取得と遮蔽を自動最適化。

  • 施工:レーザー計測・現調アプリ、現場1日完結の標準化が進む。

窓は、電気代・健康・騒音・災害に効く“家の最優先アップグレード”に。


7|技術の肝(現場の勘所)️

  1. :U値(熱貫流)×η値(日射取得)を地域・方位で最適化。南面は遮熱、北面は断熱重視など。

  2. 気密:カバー工法は下枠の立ち上げ・シール連続性が命。

  3. 結露:ガラスだけでなく枠の断熱・気密まで見ないと根治しない。

  4. 遮音周波数特性でガラス構成を変える(交通騒音と人声では解が違う)。

  5. 日射・眩しさ:外付け庇・ブラインド・植栽まで含む総合日射計画

  6. 意匠:既存意匠との取り合い(見付・見込・納まり)をモック写真で事前合意。


8|ビジネスモデルの変遷:売切りから“運用・体感”へ

  • :ガラス交換/サッシ入替=単発工事。

  • 診断→設計→施工→体感検証→アフターまでの伴走。

  • 可視化室温・表面温度・電力・騒音レベルを簡易ロガーで記録→ビフォー/アフターを提示

  • 支払い:分割・リース・光熱費差額での実質負担ゼロ型など、多様化。


9|“選ばれる会社”の運用テンプレ

  1. 3プラン見積
    ベーシック(内窓+Low-E)/スタンダード(カバー工法+樹脂枠+Low-E)/プレミア(真空or薄型トリプル+電動遮蔽)。

  2. 体感キット
    サーモ画像・表面温度計・簡易騒音計でその場デモ

  3. 方位別仕様書
    南:遮熱強化/北:断熱強化/東西:朝夕眩しさ対策。

  4. アフター
    1・12か月点検、パッキン再圧着、戸車・錠の微調整、結露チェック

  5. 成果レポート
    室温・電力・苦情(眩しさ・結露・騒音)のKPIグラフを1枚で納品。


10|KPI

  • 室温安定度(1日の温度レンジ)

  • 暖冷房負荷の推定削減(前年同月比の電力・燃費)

  • 表面温度差(ガラス中心/枠/壁)

  • 室内騒音(dB)/早朝・深夜のピーク

  • 施工満足度(★)/不具合率(%)/再依頼・紹介率(%)


11|現場の“やりがい”はこう変わった

  • 見える成果:サーモ画像の色が変わる、結露が止まる、騒音グラフが下がる。

  • 暮らしを変える実感:朝の寒さ・西日の眩しさ・在宅ワークの音問題がその日から改善

  • 設計の面白さ:方位・周辺環境・住まい方で正解が変わるパズル

  • 長く残る仕事:毎日触れる窓に自分の工事が“手触り”として残る。

  • 感謝がダイレクト:「子どもが風邪をひきにくくなった」「会議が聞き取りやすい」など生活の声が励み。


12|100秒ストーリー(北側の寝室)

冬の朝、北側の窓がびしょ濡れで眠りが浅いという相談。
現調で枠の冷橋・下枠の気密切れ・カーテンの結露抑制不足を確認。
樹脂カバー+Low-E内窓+下枠気密補修+夜間換気プランを提案。
翌月、結露はほぼゼロ、室温の谷が3℃→1℃へ。

「朝の目覚めが違う」——窓1枚が暮らしの質を押し上げた。


13|明日からできるミニ改善 ✅

  • 現調時に方位・周辺騒音・直射時間をチェック表で記録。

  • 提案書に**サーモ写真(現状)+想定断面図(納まり)**を1枚追加。

  • 引渡し時に結露・換気・遮蔽の使い方カードを同梱。

  • 1か月後フォローで体感ヒアリング+ワンポイント調整


まとめ ✨

窓リノベーションは、
**「見た目」→「断熱・遮音」→「健康・体験」→「脱炭素・スマート」**へと進化してきました。
これからの鍵は、方位別最適化×気密・遮音の総合設計×体感の見える化

今日の一歩は――現調チェック表の刷新体感デモの標準化
小さな工夫が、選ばれ続ける会社と、お客様の“毎日の快適”をつくります